急性の心房拡大により、多数のリエントリー回路が形成され、心房細動は誘発されやすくなり持続も容易となる。本研究では、心房拡大による心房細動の受攻性、心房拡大に伴う心房興奮伝導異常の特徴について確認し、それらに対する薬物の効果を検討することを目的としている。 ウサギ摘出心を用いたLangendorff灌流下で、右肺静脈と左上大静脈に接合したチューブから排水し先端を上下させることにより、心房内圧を任意に調節可能なモデルを作成した。このモデルは、Ravelliらのウサギ心房圧負荷モデルを一部改変したものであり、平成20年度内に確立することができ、以後の実験に供用した。上記モデルにおける心房細動受攻性について、有効不応期(ERP)や高頻度ペーシングによる心房細動の誘発率を検討することにより評価した。心房内圧を上昇させることによりERPは圧上昇とともに短縮し、心房細動誘発率が高くなることが確認された。ERPの短縮は、圧に対して直線的に変化したが、心房細動誘発率はある程度の圧を境にして急激に上昇した。最終的に心房内圧を18cmH_2Oまで上昇させることにより全ての個体において心房細動が100%誘発された。抗不整脈薬であるピルジカイニドとベプリジルは、心房細動誘発率を減少することが可能であった。ただ、電気生理学的なパラメータについての影響についてはピルジカイニドとベプリジルでは異なっていた。つまり、心房細動に対する薬物の効果は一様でないことが示唆され、本研究のモデルは薬物開発の指標を確立するために非常に有用であることも確認された。
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