心房拡大による心房細動に対する受攻性や、心房拡大に伴う心房興奮伝導異常の特徴についての実験を行った。これらの電気生理学的指標に対する薬物の効果を検討することにより心房細動の予防と治療への応用を目的としている。 ウサギ摘出心を用いたランゲンドルフ灌流下で、右肺静脈と左上大静脈に接合したチューブから排水し先端を上下させることにより、心房内圧を任意に調節可能なモデルを作成した。このモデルは、ラベリらが報告しているウサギ心房圧負荷モデルを一部改変したものである。平成20年度内に確立することができ、平成21年度の実験に供用した。心房内圧を上昇させることにより心房の有効不応期は圧上昇とともに短縮し、心房細動誘発率が高くなることが確認され、最終的に心房内圧を18センチメートル水柱圧まで上昇させることにより全ての個体において心房細動が誘発された。抗不整脈薬であるピルジカイニドとベプリジルは、心房細動誘発率を減少することが可能であった。光学マッピングにおいては、ベプリジルのみが心房内圧上昇により不均一となった伝導を改善することが示された。心房細動に対する薬物の効果は一様でないことが示唆され、また心房細動抑制効果の機序も薬物により異なると考えられた。トリップチャネルも関与していることも確認できた。本研究のモデルは薬物開発において考慮すべき重要な所見が得られており、非常に有用である。
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