研究課題/領域番号 |
20590825
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研究機関 | 神戸大学 |
研究代表者 |
石川 雄一 神戸大学, 保健学研究科, 教授 (90159707)
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研究分担者 |
平田 健一 神戸大学, 医学研究科, 教授 (20283880)
石田 達郎 神戸大学, 医学部附属病院, 准教授 (00379413)
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キーワード | 脂質代謝 / 高比重リポ蛋白 / 血管内皮 / リパーゼ / 臨床検査 / 動脈硬化 / 生活習慣病 / 循環器 |
研究概要 |
血管内皮リパーゼ(Endothelial lipase ; EL)はホスホリパーゼA1活性を有し、HDL中のリン脂質を選択的に分解してHDL代謝を促進する。マウスでELを不活性化すると、血清HDL-C値が上昇する。本研究ではヒト血清中のEL濃度と活性と血清HDL-C濃度との関係を明らかにするとともに冠動脈疾患とその危険因子におけるELの役割を検討した。 ヒト血清EL濃度と血清HDL-C値との関係を検討したところ、EL濃度は血清HDL-C値と有意な逆相関関係を示したが、血清LDL-C濃度や中性脂肪濃度とは関連がなかった。また、高脂血症治療薬であるピタバスタチンは血清HDL-C値を10-12%増加させるが、ピタバスタチンは血清EL濃度を減少させることが明らかとなった。また、ELは血清中で酵素的に切断不活性化されることが知られている。そこで活性型ELと血清HDL-C値との関係を検討するために、血清を抗EL抗体で免疫沈降した後に、その活性を蛍光標識した合成リン脂質Bis-BODIPY FL C11-PCを基質として測定する系を開発した。ヒト血中EL活性と血清HDL-C値との関係を検討したところ、EL濃度は血清HDL-C値と有意な逆相関関係を示したが、血清LDL-C濃度や中性脂肪濃度とは関連がなかった。さらに、冠動脈疾患患者では、非冠動脈疾患患者と比較して、血清HDL-C値が低値であるとともに、血清EL活性が上昇していた。また、喫煙習慣は血清EL活性を上昇させるとともに、血清HDL-C値を低下させた。以上より、ELが血清HDL-C値の規定因子であり、スタチンのHDL上昇作用にELが関与することが明らかとなった。また、ELは冠動脈疾患の発症に対して血清HDL-Cを介して関与するのみならず、直接的な促進作用をすることが示された。
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