研究概要 |
循環器内科に入院中の虚血性心疾患患者さんにおいて本研究への協力の得られた患者さんの歯周病の有無および程度を脱落歯数、ポケットの深さ6mm以上の歯数、プロービングによる歯周組織からの易出血性のある歯数、パモントグラフィーを用いて歯槽骨の骨吸収の程度が歯根長の1/2以上に達する歯数、喫煙数からなるPPRD (periodontal pentagon risk diagram by Renvert S, et al, J Clin Periodontal, 2003)のcode分類によりスコア化して評価した。その結果、急性冠症候群の患者において有意に歯周病スコアが高く歯周病の進行している患者が多いことがわかった。また、歯周病菌Prevotella intermediaの血中抗体価をELISA法にて測定した。その結果、Prevotella intermedia抗体価は有意に歯周病スコアに相関しており、歯周病抗体価が歯周病重症度を反映することがわかった。冠動脈内プラークには樹状細胞をはじめとして多くの白血球が浸潤している。その白血球に発現しているToll-like receptor (TLR)が病原体の構成成分を特異的に認識し,免疫応答の引き金を引くことが明らかになってきている。歯周病菌の感染とTLRとの関連が報告されており、冠動脈プラーク病変のサンプルおよび末梢血白血球のTLRの発現を検討した。その結果、急性冠症候群の患者の末梢血白血球ではTLR2およびTLR4の発現が亢進しており、冠動脈プラーク病変ではTLR4の発現が亢進していた。これらのことから、歯周病菌がTLR4を介して白血球を活性化させ、それが急性冠症候群の発症に関与している可能性が示唆された。
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