研究課題/領域番号 |
20590830
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研究機関 | 宮崎大学 |
研究代表者 |
鶴田 敏博 宮崎大学, 医学部, 助教 (10389570)
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研究分担者 |
浅田 祐士郎 宮崎大学, 医学部, 教授 (70202588)
畠山 金太 宮崎大学, 医学部, 講師 (60325735)
北村 和雄 宮崎大学, 医学部, 教授 (50204912)
加藤 丈司 宮崎大学, フロンティア科学実験総合センター, 教授 (20274780)
鬼塚 敏男 宮崎大学, 医学部, 教授 (60108595)
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キーワード | 外膜 / マクロファージ / 炎症 / メタロプロテアーゼ / マスト細胞 / 新生血管 / 動脈瘤 / マスト細胞膜安定化剤 |
研究概要 |
ヒト腹部大動脈瘤の外膜側に即時型アレルギーに関与するとされる「マスト細胞」が瘤径に相応して増加した。また腹部大動脈瘤壁には対照の腹部大動脈壁に比し、「脱顆粒したマスト細胞」が数多く観察され、マスト細胞の分化や成熟に関わるstem cell factorやそのリガンドであるc-kitのリン酸化が亢進していた。一方、外膜に分布するCD68陽性マクロファージ数に著変は見られなかった。 マスト細胞の腹部大動脈瘤形成に関わる役割を明らかにするために、マスト細胞が欠損したラットを用いて血管外膜を塩化カルシウムで傷害したところ、14日間の観察中、ワイルドタイプのラットに比べて瘤形成が生じにくいことを見出した。これらの瘤形成は動脈外膜側へのマスト細胞の集簇や活性化、Tリンパ球の外膜への浸潤、マトリックスメタロプロテアーゼ(MMP)-9活性や新生血管数の減少と関連していた。また、マスト細胞の膜安定化剤をワイルドタイプのラットに投与して血管外膜を塩化カルシウムで傷害しても瘤形成の生じにくいことが判明した。一方、動物モデルでもマクロファージ数は有意に変化しなかった。MMP-9の主産生源はマクロファージであったため、マスト細胞はマクロファージからのMMP-9産生を促している可能性が示唆された。 そこで、マスト細胞とマクロファージを共培養すると、マクロファージ由来のMMP-9が著増することが明らかとなった。さらにマスト細胞膜安定化剤の前処置によりマクロファージからのMMP-9産生が抑制された。これらの研究より、血管外膜に分布するマスト細胞がマクロファージと協調しながら腹部大動脈瘤形成に関与しており、同細胞の外膜への集簇や活性化を抑制することで腹部大動脈瘤の進展を抑制できる可能性が示唆された。
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