研究概要 |
睡眠時無呼吸にともなう特徴的な心拍数の変動であるcyclic variation of heart rate(CVHR)を,ホルター心電図から自動検出するアルゴリズムとしてautocorrelated wave detection with adaptive threshold(ACAT)を開発し、睡眠時無呼吸の診断を目的とする終夜睡眠ポリグラフ検査例862例、および終夜睡眠ポリグラフ検査を実施した運送会社の全男性社員165例に適用した。その結果、ACATによって中等症以上の睡眠時無呼吸を感度83%、特異度88%で検出可能であることが見出され、睡眠時無呼吸のスクリーニング法としての本アルゴリズムの有用性が証明された(Circ Arrhythm Electrophysiol 2011;4:64-72)。さらにACATを661例の急性心筋梗塞後のホルター心電図に適用したところ、睡眠中にCVHRが15回/時以上の見られる群では、15回/時未満の群に較べて、心筋梗塞後2年以内の死亡率が約2倍になることが見出され、CVHRの増加が心筋梗塞後死亡率の危険因子であることを示した。 ACATは特許申請の後、共同研究企業のホルター心電図解析に導入され、現在、毎月4000例以上のホルター心電解析に適用されている。これにより、本研究の目的であるホルター心電図の自動解析による睡眠時無呼吸スクリーニングの実用化が達成された。睡眠時無呼吸は、日中の眠気による作業効率の低下や事故の原因となるのみでなく、循環器疾患の発症率および死亡率を高める因子である。それにも関わらず患者の75%以上が診断されずに放置されている。ホルター心電図はわが国で年間120万例以上実施されており、その対象である循環器疾患患者は睡眠時無呼吸のハイリスク群である。本研究の成果として実現した、ホルター心電図による睡眠時無呼吸の自動解析は、本疾患の潜在患者のスクリーニング法として広く活用されるものと期待される。
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