近年、メタボリックシンドローム、生活習慣病が原因と考えられる心血管病や脳血管障害が急激に増加している。なかでも、急性心筋梗塞、脳梗塞は突然に発症するため、その予知は極めて困難である。ヒト冠動脈には経年的にプラークと呼ばれる内膜の肥厚性病巣が形成されるが、冠動脈プラークは、時に「不安定状態」へと変貌することが知られている。最近では、酸化ストレスの亢進により、その生成が増加すると考えられている酸化LDLが動脈硬化の形成・進展、およびプラーク不安定性に関連していることが報告されている。われわれは、酸化ストレスマーカーである酸化LDL、ミエロペルオキシダーゼ(MPO)、パラオキソナーゼ(PON)、ネオプテリンなどの血液バイオマーカーの動脈硬化性疾患における意義を検討し、さらに頸動脈エコーによるプラーク画像との関連性も検討した。不安定狭心症患者における酸化ストレスマーカーである血中酸化LDLやMPO値は安定狭心症患者に比し、有意に高値を示し、逆に抗酸化ストレスマーカーであるPON値は有意に低値を示していた。血中MPO値は酸化LDL値と強い正相関を示しており、逆にPON値とは弱い負の相関を示していた。また血中酸化LDL値やMPO値は血管造影上の複雑病変と関連しており、さらに血中ネオプテリン値は頸動脈エコー上の複雑なプラークと関連していた。これらの結果から、ヒトの生体内では酸化-抗酸化バランスが存在しており、そのバランスの破綻がプラーク不安定性と関連している可能性が示唆された。このことは急性心筋梗塞の発症過程を予知する可能性が十分あると考えられ、今後前向きな試験が必要である。
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