近年、社会の高齢化、およびメタボリックシンドロームや生活習慣病の増加に伴い心血管病や脳血管障害が急激に増加している。なかでも、急性心筋梗塞、脳種塞は突然に発症するため、その予知は極めて困難である。ヒト冠動脈には経年的にプラークと呼ばれる内膜の肥厚性病単が形成されるが、冠動脈プラークは、時に「不安定状態」へと変貌することが知られてる。最近では、酸化ストレスの亢進により、その生成が増加すると考えられている酸化LDLが動脈硬化の形成・進民展、およびプラーク不安定性に関連していることが報告されている。われわれはこれまで、酸化ストレスマーカーである酸化LDLを中心に様々なバイオマーカーの動脈硬化性疾患における意義を検討してきており、一部の酸化ストレスマーカーが急性冠症候群で上昇、あるいは低下していることを報告してきている。さらに近年進歩の著しい、頸動脈エコー、マルチスライスCT、心臓MRIなどの新たな非侵襲的画像診断を導入し、その臨床的有用性はもちろんのこと、いまだ研究段階である不安定プラークの検出・同定に関する臨床データを蓄積しつつある。特に我々が注目しているのはマルチスライスCTにて感度よく同定できる石灰化の不安定プラークにおける特徴や、MRIを用いた冠動脈血栓の同定に力を注いでいる。今後急性心血管イベントを起こしうる可能性の高い患者群を同定できるかについて、これらのバイオマーカー、および非侵襲的画像診断法を用いて前向き試験により検討することを目標としている。
|