研究概要 |
【目的】最近の研究により末梢血単球は単一ではなく、多様性を有することが明らかにされた。平成20年度の:研究において、末梢血単球のサブセット(CD14^<high>CD16^-CCR2^+,CD14^<low>CD16^+CX3CR1^+)は、急性冠症候群(ACS)の病態形成、特に冠動脈プラーク破裂にどのように関与するかを検討した。【方法および結果】急性心筋梗塞(AMI),不安定狭心症(uAP)、安定狭心症、健常人の4群を対象とした。AMI患者において、CD14^<high>CD16^-CCR2^+の割合は他の3群に比し、有意に高値であった。一方、uAP患者では、単球サブセットの分布に多様性(CD14^<high>CD16^-CCR2^+優位型とCD14^<low>CD16^+CX3CR1^+優位型の2タイプ)を認めた。この多様性の原因を解明するため、uAP患者46名を対象に、単球サブセットの多様性と冠動脈プラーク性状との関連をみた。冠動脈プラークの性状評極には、optical coherence tomography (OCT)を用いた。プラーク破裂群と非破裂群に分類したところ、プラーク破裂群は27名(59%)、非破裂群は19名(41%)にみられた。冠動脈プラーク破裂のバイオマーカーとして有用であることが証明されている高感度CRPとの関連をみた結果、プラーク破裂群は非破裂群に比し、有意に高値であった。単球サブセットとの関連をみた結果、プラーク破裂群は非破裂群に比し、有意にCD14^<low>CD16^+CX3CR1^+単球数が高値であった。一方CD14^<high>CD16^-CCR2^+単球数はプラーク破裂の有無と有意な関連を認めなかった。また、CX3CR1ケモカインのレセプターであるfractalkineに関して、その血中濃度を比較したところ、プラーク破裂群は非破裂群に比し、有意に高値であった。【結論】末梢血単球の質的差異は、ACSの病態に関与している可能性が示唆された。以上の研究成果の一部はJ Am Coll Cardiologyに投稿し、受理された(in press)。
|