研究概要 |
腎不全例では血中B-type natriuretic peptide(BNP)濃度が上昇することが知られており、血中BNP濃度は心臓機能障害以外の因子により影響を受ける。一般住民のCKDを対象として血漿BNP濃度の高値が心血管疾患発症に関連するかどうかを検討した。岩手県北コホート研究に参加した26,469名のうち、血中BNP、血中クレアチニン、尿蛋白を測定し、心血管病(心不全、脳卒中、心筋梗塞症)の既往のない40歳以上で、調整因子(BMI、心電図、血圧など)を全て計測した男女13,526名(男性4,542名、女性8,984名)を解析対象とした。CKDを推算糸球体濾過率(eGFR)60未満または尿蛋白偽陽性以上と定義した。このCKDコホート(n=1,901)を対象として新規心血管事故発症(心不全、脳卒中、心筋梗塞・突然死)をエンドポィントとして追跡調査した。古典的危険因子で調整したCOX比例ハザードモデルで検討した。第1分位に比較して第4分位では各種のリスク因子を調整しても心血管事故発症リスクが5.54倍(95%信頼区間;1.81-16.7)高かった。よって、一般住民において中等度の腎機能障害のある例でもBNP高値が心血管事故発症と関連することが示され、CKDのリスク層別化マーカーとしてもBNP測定は有用であることが示唆された。
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