研究概要 |
慢性腎臓病(CKD)は、総死亡や冠動脈疾患および心不全の発症リスク因子とされている。しかし、心血管事故発症率が低く、相対的にGFRが低い本邦の一般住民で果たしてどの程度の腎機能障害が心血管事故の易発症性と関連しているかは明らではない。そこで本研究ではCKDの有病率を一般人口明らかにするため現在進行中の岩手県北地域コホート参加者(2.6万人)を対象に検討した(肥田ら心臓2010)。その結果、その頻度は男性12.7%、女性13.7%であり、一般人口の中に占める割合は決して低いものとは考えられなかった。よって、次に、CKDの中のハイリスク群を如何に効率よく選別できるかを検討した。(1)血漿BNP濃度:同コホートのうち血中BNPを測定した13,526名を解析対象とした。その結果、そのCKDコホート(n=1,901)を対象として新規心血管事故発症(心不全、脳卒中、心筋梗塞・突然死)をエンドポイントとして追跡調査した。古典的危険因子で調整したCOX比例ハザードモデルで、BNP第4分位では他のリスク因子を調整しても心血管事故発症リスクが5.54倍(95%信頼区間;1.81-16.7)高かった(Sakima et al. Cir J 2010)。(2)血清高感度CRP値:同コホートで血清CRP値を測定した1,074名の男性を対象とした.心血管事故(脳卒中もしくは生存心筋梗塞)と全死亡と血清hsCRP値との関係を検討した.CKD群を血清CRP値で5分位に分けて心血管事故および全死亡を複合事故と関係をCoxの比例ハザードモデルを用い解析した。その結果、確立された心血管事故発症の危険因子(年齢、高血圧,糖尿病,高脂血症,BMI,現喫煙)を多変量解析にて調整しても血清CRP値の第4分位および第5分位の相対ハザード比は,第1分位に対して、それぞれ1.78倍、2.77倍と有意に高かった(Koeda et al. Int Heart J 2011).以上より、本研究で明らかになったことは、(1)一般人口のCKDの割合は13%前後であった。(2)CKDの中でも高リスク群を選別するためには高感度CRP値やBNPを測定する事が有用である可能性を示した。
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