研究概要 |
ラット脂肪前駆細胞の培養系において、脂肪細胞におけるアドレノメデュリン(AM)の意義について検討した。メディウム中AMの分子型をイムノラジオメトリック法で測定すると、脂肪細胞はAMの活性型と非活性型の両分子を分泌していたが、分化が進むと活性型の分泌比が増加した。AMの分泌量は今まで報告されている細胞よりも多かった。RT-PCR法にて脂肪細胞内のAMとその受容体CRLR、RAMP2,3の遺伝子発現について検討すると、AMとCRLR、RAMP2,3は脂肪細胞において高発現していた。AMの生理的意義について検討したところ、AMはブドウ糖取り込み促進作用や、脂肪分解作用を認めた。これらのAMの作用の細胞内シグナルについても検討したところ、AMは細胞内cAMPを用量依存性に増加させ、ウエスタンではPKA、ERK、Aktのリン酸化も認めた。またAMのブドウ糖取り込み作用はwortmanninで抑制され、脂肪分解作用はKT-5720もしくはU0126で抑制された。またイソプロテレノールとAMは脂肪分解作用に対して相加的に働き、最大濃度でも相加的であった。さらに脂肪細胞の分化時にAMを添加すると、脂肪細胞の分化は促進された。以上の結果から、脂肪細胞はAMを活溌に分泌しており、AMは脂肪分化・脂肪分解・ブドウ糖取り込み作用等を有し、各々細胞内機序は異なることが示唆された。心房性ナトリウム利尿ペプチド(ANP)の脂肪細胞に対する作用についても検討した。脂肪細胞にはナトリウム利尿ペプチド受容体AとCが高発現していた。脂肪細胞においてANPはcGMPを用量依存性に増やし、脂肪分解作用を有し、PKGの拮抗薬で抑制された。一方C受容体のリガンドはcAMP低下作用を有し、脂肪分解を抑制した。このように脂肪細胞においてANPは2つの受容体を介して、別の細胞内機序を通して2方向性に働いていることが示唆された。
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