心房性ナトリウム利尿ペプチド(ANP)の脂肪細胞に対する作用について検討した。脂肪細胞にはナトリウム利尿ペプチド受容体AとCが高発現していた。脂肪細胞においてANPはcGMPを用量依存性に増やし、脂肪分解作用を有し、PKGの拮抗薬で抑制された。一方C受容体のリガンドはcAMP低下作用を有し、脂肪分解を抑制した。このように脂肪細胞においてANPは2つの受容体を介して、別の細胞内機序を通して2方向性に働いていることが示唆された。 心不全患者においてアドレノメデュリン(AM)の治療効果について臨床の現場で検討した。AM+hANPを全例に副作用なく12時間の投与が可能であった。AM投与によって全身の血管抵抗、肺血管抵抗の低下と心拍出量の増加が認められた。またBNP、アルドステロン、酸化ストレスの低下が認められた。hANP単独ではこれらの効果が減弱したことから、AM+hANPの治療は有効な治療である可能性が示唆された。 心不全患者においてBNPの分子型を測定した。現在のBNPの測定系ではBNP-32とproBNP-108を両方交叉して測定していることが示された。また心不全では心室負荷タイプがproBNP-108を主に、心房負荷タイプではBNP-32を主に血中では多く存在した。心臓組織の検討では心室ではproBNP-108を主に、心房ではBNP-32を主に存在した。開心術時に得られた心嚢液のサンプルでは、やはりproBNP-108が主に存在していた。また非代償生の心不全を治療するとproBNP-108の比が低下した。一方、自然経過で観察し得た心不全の悪化例ではproBNP-108の比が増加した。以上の結果からproBNP-108の測定は心不全患者の心室筋の質的なマーカーに将来なる可能性が示唆された。
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