研究概要 |
心不全患者においてBNPの分子型を検討した。現在のBNPの測定系はBNP-32とproBNP-108を両方交叉して測定していることが判明した。心室負荷心不全ではproBNP-108が、心房負荷心不全ではBNP-32が主に血中では多くみられた。心臓組織では心室ではproBNP-108が、心房ではBNP-32が主に存在した。また非代償性の心不全を治療するとproBNP-108比が低下し、自然経過で観察し得た心不全の悪化例ではproBNP-108比が増加した。proBNP-108は心不全患者の心室筋の質的なマーカーに将来なる可能性が示唆された。NT-BNPについても検討した。現在臨床で用いられている測定系は、1つの抗体は糖鎖付着部位を認識している。そこで、脱糖鎖酵素処理をして測定すると、現在の測定系では全体の1/4に過小評価している事が判明した。この率は心不全の重症度に関係がなく、透析患者では1/10に過小評価していた。これは糖鎖の付着したNT-BNPが透析膜を通過せず蓄積しているためと考えられた。Rho-kinase阻害薬は腎疾患に有用な治療薬である事を示して来たが、ACE阻害薬との併用も有用である事を、腎臓の線維化モデルで示した。この機序には酸化ストレスの低下,炎症の抑制、TGF-β/collagen系の抑制等、種々の機序が関係していた。アドレノメデュリンやナトリウム利尿ペプチド受容体は脂肪細胞の糖・脂質代謝に関係している事を報告してきた。虚血性心疾患患者の開心術時に冠動脈周囲の脂肪組織を採取し、皮下脂肪と比べる事でその意義について検討したところ、虚血性群では非虚血群よりも心臓周囲の脂肪組織でサイトカイン、アドレノメデュリンやナトリウム利尿ペプチドC受容体の発現が増加し、これが病態に関係している事が示唆された。
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