研究概要 |
心血管系細胞に対するアルドステロンのゲノム作用を介した、肥大や線維化、アポプトーシス誘導、炎症反応惹起作用といった悪影響についてはこれまで広く検討されてきている。一方、非ゲノム作用を介した直接的生理作用に関しては全く未知の状態である。アルドステロンは高食塩摂取下において、細胞毒性があるものの、元々の生理作用は高い浸透圧下における細胞保護であると我々は想定している。この仮説のもとに、我々は高感度酸化ストレス反応系の実験システムを用いたアルドステロンの酸化力の検討を行った。仔ラット培養心筋細胞を用い、無血清培養を行い、2',7'-dichloro dihydro-fluorescein diacetate fluorescence(H_2DC-FDA)を用いてsuperoxide levelを測定することで酸化ストレスの評価を行った。結果、48時間の無血清培養によりreactive oxygen species(ROS)産生は有意に増加した。アルドステロンを48時間無血清培養の各々前後1時間のみ、短時間刺激したところ有意ではないもののROS産生が抑制される傾向が示された。この結果はこれまで多数報告されている、アルドステロンのゲノム作用を介した炎症惹起作用に伴う、ROS産生増加作用と相反する作用であり、大変興味深い。つまり、アルドステロンは短時間刺激により、非ゲノム作用を介し、一過性に細胞保護作用を示す可能性があることを示唆する所見である。今後は、各種受容体あるいは蛋白活性などの阻害薬を併用し、この細胞保護作用のメカニズムにつき検討していく予定である。
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