心臓における組織アルドステロン合成の制御機構につき検討を行った。これまで我々は仔ラット培養心筋において、ANP及びBNPシグナルの抑制下にてアンギオテンシンII刺激により、心筋組織アルドステロンが合成されることをin vitroで証明した。本年度は大動脈縮窄モデルにて検討を行った。4週間の下行大動脈縮窄により後負荷が増大し、心筋重量の増加を認めた。これに伴い、組織中のアルドステロン合成酵素である、CYP11B2のmRNA量の増加を認めた。以上から副腎外臓器である心臓における局所アルドステロン産生の可能性がin vivoにおいても確認された。 さらに我々は、心臓のみでなく、副腎におけるアルドステロン合成機構に関しても検討を重ねた。副腎においてアルドステロンは様々な刺激因子により合成されている。ACE阻害薬やARBに加え、近年、Ca拮抗薬がアルドステロン合成を抑制する可能性が報告されている。Caチャンネルとして、L型、T型そしてN型が複雑に関与していると考えられるが詳細は不明である。これまで、T型とアルドステロン合成の研究成果が散見されるが、本研究においては特にN型に注目した。我々は副腎癌細胞であるH295R細胞にN型Caチャンネルが存在することをreal-time PCRにて確認した。次にN型Caチャンネル拮抗薬であるωコノトキシンあるいはsiRNAによりN型Caチャンネルをノックダウンしたところ、アンギオテンシンII刺激によるアルドステロン合成が有意に抑制された。これまでN型Caチャンネルは神経細胞終末にのみ存在すると考えられていたが、今回我々は副腎細胞での存在を確認した。さらに、このN型CaチャンネルがT型と同様、副腎におけるアルドステロン合成に寄与している可能性を見出した。
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