昨年度に引き続き、仔ラット初代培養心筋細胞でのアルドステロン合成酵素CYP11B2の発現を検討した。増幅される因子の検討を主体に同酵素遺伝子のRT-PCRを行った。その結果、高糖濃度環境がアルドステロンの産生促進に大きく関与することを発見した。現在、ナトリウム利尿ペプチドや酸化ストレスの関与を中心に高糖濃度刺激のメカニズムを解析している。加えて、同様のモデルでアルドステロンは高糖濃度下でインスリンシグナルを活性化することも分かった。共に心不全において活性化されるレニン-アンジオテンシン-アルドステロン系(RAAS)と糖代謝は、危機的な状態にある心臓に対するいわば生体の防御反応的機構とも言える。本研究結果はその架け橋としてのアルドステロン産生亢進のメカニズムと役割を解明するものであり、これらを通じて不全心におけるRAAS活性化の病態生理学的意義を細胞内エネルギー代謝の観点から捉えることができると考える。 副腎におけるアルドステロン合成機構に関しても、昨年に引き続き副腎癌細胞であるH295Rを用いて検討した。N型Caチャネル拮抗薬としてωコノトキシンを使用し、アンジオテンシンII刺激によるアルドステロン合成を検討した。その結果、副腎に存在するN型Caチャンネルがアルドステロン及びコルチゾール合成のみならず、分泌にも関わっていることがわかった。興味深いことにωコノトキシンはCYP11B1及びB2の発現には影響を及ぼさなかった。以上より、L型だけでなくN型Caチャネルの阻害作用も併せ持つシルニジピンが単純な降圧薬としてだけでなく、RAASが亢進するような病態や、RAAS阻害薬投与中にアルドステロン・ブレークスルーを呈するような症例でより他のCa拮抗薬と比較し、より有効性があることが示唆された。
|