研究概要 |
経皮的冠動脈インターベンション(PCI)時の虚血耐性の発症形式の違いを検討し、その機序の解明を目的として、虚血性心疾患患者を対象に左前下行枝に対する待機的PCI時の心筋傷害の程度と血中マーカーの変動を観察した。虚血スコア変化、冠動脈内心電図変化、冠静脈洞血乳酸値の変化よりプレコンディショニングによる心筋保護作用が発揮された症例とされなかった症例に分類し、バルーン拡張前後での冠静脈洞血中の酸化マーカー、サイトカイン変化を解析しその差異を観察。PCI中に測定した項目は、冠動脈内心電図、十二誘導心電図、冠動脈内圧、胸痛スコア、冠静脈洞血乳酸値、冠静脈洞血各サイトカイン濃度(IL-6, TNF-α, TGA-β1)や酸化ストレスマーカー濃度(マロンジアルデヒド-LDL,糖化反応後期生成物[AGE]等,)とした。通常のover the wire型バルーンを用い標的部位を2分間拡張、拡張中の心電図、冠内圧、胸痛を30秒毎に記録した。2分経過後速やかにバルーンに陰圧をかけ再灌流し、直後,1分,3分,4分30秒後に冠静脈洞内採血を行い各マーカーの測定を行った。5分間のインターバル後再度バルーンを拡張し同様の手順で各項目を測定した。 一回のバルーン拡張前後でのサイトカインや酸化マーカーの変動を検討した結果、IL-6,および8-OHdGが冠静脈内血中濃度値に比しバルーン拡張後の再灌流時の濃度が上昇していた。そのうち二回目のバルーン拡張中あるいは拡張後の冠動脈内心電図変化および乳酸産生が一回目に比し軽度であった症例をプレコンディショニング陽性群では、二回目も一回目と同等であったものをプレコンディショニング陰性群に比し8-OHdGの変化率が有意に高値であることが確認された。
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