研究概要 |
経皮的冠動脈インターベンション(PCI)時のプレコンディショニングの出現機序解明を目的として、その発症形式の違いと患者背景及び遺伝子情報とに関連性がないかを検討した。昨年までの研究結果より、プレコンディショニングによる心筋保護作用が発揮された症例(PC陽性群)とされなかった症例(PC陰性群)との検討では、一回目の虚血後の冠静脈洞内の8-OHdG血中濃度の上昇がPC陽性群でのみ有意であることを確認している。本年は、さらに、その機序を詳細に検討するため、虚血耐性効果の有無と患者個有の遺伝情報とが関連するかをSNP解析を用いて検討を行った。PC陽性群とIPC陰性群とに分類しSNPの網羅的解析を行い有意に偏ったSNPがないかを検討したが、p値が0.05未満となるSNPはなく、プレコンディショニング出現と減弱が一つのSNPでは説明できないことを確認した。次に、女性の非糖尿病患者層においては、PC効果の出現の有無と一回目の虚血後の8-OHdGの上昇の程度に有意差が認められていなかったことに着目し、この層を抽出して肥満遺伝子異常の有無を検討した。その結果、この層におけるPC陰性群ではベータ3アドレナリン受容体遺伝子異常または脱共役タンパク質1遺伝子いずれかの異常を有する率がPC陽性群に比し有意に高いことを確認した(57.1%vs.22.2%,p=0.040)。一方、男性や女性糖尿病患者では、2群間における遺伝子異常保有率に差がないことを確認している。これらより、8-OHdG産生がヒトにおいてプレコンディショニング現象を引き起こすトリガーの役割をする一方、その下流には肥満遺伝子異常と関連する因子が阻害因子として関与している可能性があることが示された.
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