研究概要 |
H20年10月からH21年9月の間で、安定型虚心症に対して待機的に冠動脈ステント留置術(PCI)を施行した男性33名、女性17名を症例対象とした。症例全員の末梢血から、PCI前と12時間後において血漿中のFractalkine(FKN)、interleukin(IL)-6、interleukin(IL)-8、adiponectinを測定した。また術前にIB-IVUSを施行し、ステント留置部位のプラーク性状を確認した。結果、術前後においてhsCRPやIL-8は有意な変化を認めなかったが、IL-6(前:14.32pg/ml、後:64.24pg/ml P<0.0001)及びFKN(前:788±111pg/mL、後872±122pg/mL P<0.0001)が有意に上昇した。IB-IVUSから確認したプラーク性状の検討においては、脂質プラークの体積との相関をみてみた。冠危険因子との相関はみられなかったが末梢採血データの中で、術後のFKNと高い正相関(r^2=0.29,P<0.0001)を確認した。他のプラーク性状との相関はなかった。すべての症例のフォローアップ造影は終了していないが、再狭窄との関連性は現時点では明らかでない。これまでの結果で重要なものは、PCIによる機械的なプラーク破裂によって末梢血中のFKNのレベルが上昇することであり、この上昇は脂質プラークの体積に依存しているという事である。これまでの他施設の報告において、不安定狭心症症例のプラーク破裂症例においてFKNがより有意に上昇する事が報告されており、我々の結果を併せ考えるならば、KNがプラーク破裂の指標になることが示唆される。
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