本補助金によって「心抑制性抗心筋自己抗体」の測定を毎週20サンプルずつ継続した。またELISA法によって、抗β1アドレナリン受容体抗体と抗M2ムスカリン受容体抗体についても治療候補者に対して測定を行った。さらに抗β1アドレナリン受容体IgG抗体のうちサブクラス3抗体のELISA測定を新たに確立し、今後も継続して測定可能となった。平成20年度末までに免疫吸着療法を実施した全症例は17例(うち10例は慶應義塾大学病院で施行)にのぼった。全例で抗β1受容体抗体もしくは抗M2受容体抗体は陽性を示したが、ともに低力価であった5例(うち4例は慶應義塾大学病院の症例)は患者の強い希望のため治療を実施した。これらの受容体抗体が陰性である症例には本治療法は行わなかった。抗β1受容体サブクラス3抗体は、これら2受容体抗体の力価とは必ずしも一致せず、17例中4例で陽性を示した。「心抑制性抗心筋自己抗体」は治療3ヶ月後に、各患者情報(氏名、治療効果)はブラインドした状態で測定したが、陽性率は17例中10例(59%)と欧米の報告と同等だった。治療3ヶ月後の心機能は、心エコー図検査では全17例すべてで改善を示した。しかし心筋シンチグラフィーによる左室駆出率の測定では、17例中5例では逆に悪化を示した。心機能評価においては、測定者の主観が入りうる心エコー図よりも、自動解析が行われる心筋シンチの方が、適切だと考えられた。なお、この左室駆出率の上昇度(%)と、心抑制性抗心筋自己抗体価の減少度(%)は有意な相関を示した。全17例の治療回数は3〜5回としたが、うち3例で治療後の「心抑制性抗心筋自己抗体」は陰性化していなかった。つまり同抗体の完全除去が行われなかったが、全例で抗β1受容体、 M2受容体抗体は陰性化していた。これら3例中で同意が得られた1例において、すでに第2クールの治療を実施し、経過観察中である。
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