研究課題
本年度は、拡張型心筋症の免疫調整療法のうち、免疫吸着療法の抗心筋自己抗体リバウンド現象、再治療の必要性を検討した。本治療法の効果判定のため第2相無作為化治療中止試験を立案したが、厚生労働省の高度医療評価会議では承認されたものの、平成21年7月2日の先進医療専門家会議において「本療法は体液量を減らす」などの理由から却下され、研究の継続が困難となった。また本年度内に企業主導治験が開始された。本治験は、われわれの治験前研究で奏功例であった症例は参加できないという問題も存在していたため、治験前研究に参加した症例に対する検討を新たに立案することとした。本邦の拡張型心筋症などの重症心不全(NYHA3度以上、左室駆出率30%未満)に対してイムソーバTR(旭化成クラレメディカル(株))による免疫吸着療法が施行された症例は、北里研究所病院8例、慶應義塾大学病院10例、信州大学病院7例が存在するも、いずれも治療前後の体重(体液量)に変化はなかった。うち9例において治療後1年にわたり抗心筋自己抗体を再測定(ストック血清による)したところ、治療6ヶ月後には全9例において同自己抗体のリバウンド現象が確認された。ドイツの治療報告ではIVIGを併用し、本邦ではIVIG併用は不要であることから、その差異がリバウンド現象の一因と考えられた。また前年度に再治療を行った1例に加えて、本年度末までに定期的に計3回の免疫吸着療法を実施した1例も加わり、現在経過観察中である。さらに本年度の新知見として、心抑制性抗心筋自己抗体のみならずIgG3特異的なG蛋白共役受容体抗体も治療経過を反映することが明らかとなった。IgG3自己抗体のリバウンドを認めた場合、再治療が行われなかった症例の予後は不良であったが、再治療を行った場合には治療2年後の左室駆出率が22%から50%まで改善した症例も観察された。
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