PLC-δ1活性を制御(亢進)するp122(1083個のアミノ酸で構成される蛋白)に着目し、冠攣縮性狭心症患者とコントロール例でp122の遺伝子および蛋白発現を比較検討した。その結果、冠攣縮性狭心症患者から採取された培養皮膚線維芽細胞においてp122遺伝子発現と蛋白発現がコントロール例に比して有意に亢進していた。一方、大動脈平滑筋細胞にp122蛋白を過剰発現させるとPLC活性が亢進し、さらにアセチルコリン刺激に対する細胞内カルシウムイオン濃度が上昇していた。p122遺伝子発現亢進の機序としては、p122遺伝子の5'側promoter解析により、-228G/Aならびに-228A/A変異が冠攣縮性狭心症男性患者の約10%で認められ、それらの変異によるpromoter活性が亢進していた。以上より、冠攣縮性狭心症患者におけるPLC-δ1活性亢進の機序の一つとしてp122蛋白の発現亢進が示唆された。
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