研究概要 |
虚血再潅流障害の抑制にミトコンドリアのpermeability transition pore(mPTP)の機能が注目されている。glycogen synthase kinase-3β(GSK3β)のmPTPに対する効果と、そのメカニズムについて研究した。方法(1)細胞膜除去ラット心筋細胞を用いて、mPTPの開口を、calceinと共焦点レーザー顕微鏡を用いて測定。(2)ラット心室筋の単離ミトコンドリアを用いてミトコンドリアと結合したhexokinase II(HKII)をウェスタンブロットと電子顕微鏡を用いて測定。結果(1)GSK3β(10nM)はcalcein強度を低下させ(投与前の79.2±1.3%,p<0.01)、これはcyclosporine A(CsA,mPTPの阻害薬:100nM)、またはSB216763(SB21,GSK3βの阻害薬、3μM)により阻害された(90.4±1.8%,92.1±1.2%,p<0.01)。(3)無グルコースもしくはグルコース6リン酸の灌流により、GSK3βによるmPTPの開口は抑制され(各々91.5±1.5%,88.7±1.4%,p<0.01)、GSK3βのmPTPへの作用はグルコース代謝に関係していることが示唆された。(4)DCCD(1μM)によるミトコンドリアからのHKIIの解離は、GSK3βによるmPTP開口を増強した(59.3±1.5%,p<0.01)。(5)電子顕微鏡とウェスタンブロットにより、GSK3βはHKIIのミトコンドリアへの結合が減少し、虚血再潅流モデルにおいてHKIIとミトコンドリアの結合は低下し、GSK3βの阻害薬であるSB21によりこの結合低下は抑制された。結論GSK3βによるミトコンドリアPTPの開口は、ミトコンドリアとHKIIの結合に依存する。
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