Glial cell line-derived neurotrophic factor(GDNF)の生理的役割を調べるために、ラット発達各段階(胎生14.5日目、生後1日目、生後49日目)におけるGDNFの発現をwhole mount免疫染色法で調べた。その結果、胎生14.5日目においては、中枢神経等の神経部位と同時に、心臓においてもGDNFの強い発現を認めた。一方、新生仔期における発現は弱く、成獣期においては、検出されなかった。また、PCR法においても、胎生14.5日目においてはabundantなGDNFの遺伝子発現が見られたが、その後成長に伴い消失した。 また、GDNFが病態心(除神経心筋)への交感神経軸索誘導におよぼす効果を調べた。液体窒素に浸して凍結したガラスリングを8週齢ラットの左室自由壁に押しつけcryoinjuryを施した。5日後に心臓を固定し、免疫染色を行ったところ、リング外側の健常部位からcryoinjury部位に向かうneurofilament M陽性の神経線維密度は著明に減少した。一方、cryoinjury作成時に、中心部の健常部位にGDNFを発現するアデノウイルスを注入したラットにおいては、リング外側の健常部位からcryoinjury部およびリング中心部の健常部位に向かう神経線維が心外膜側に多く観察された、PBSのみを注入した対照群と比較しcryoinjury部の神経線維密度は有意に増加していた。 以上の結果より、GDNFは胎生期心筋において神経伸長に関与している可能性があること、また、傷害により除神経が生じた心筋においては、外部から強制発現させることにより、神経の再伸長を促す効果があることが判明した。
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