本研究課題により、神経栄養因子Glial cell line-derived neurotrophic factor (GDNF)が、心筋細胞への交感神経軸索誘導に重要な役割を果たしていることがin vitro実験で明かとなった。その結果をふまえ、神経栄養因子の発現が、移植心筋シートへの交感神経軸索誘導をおよぼすかどうかを調べた。液体窒素に浸して凍結したガラス棒を8週齢ラットの左室自由壁に押しつけcryoinjuryを施した。5日後に心臓を固定し、免疫染色を行ったところ、cryoihjufy部の外側健常部位からcryoinjury部に向かうneurofilament M陽性の神経線維密度は著明に減少していた。あらかじめ、新生仔ラット由来心室筋細胞を、温度感受性培養皿上で培養をし、心筋シートを作成した。Cryoinjury部位に、心筋シートを貼付して閉胸、5日後に心臓を固定し、心筋シート部位に伸長する神経線維密度を調べた。その結果、対照群においては、neurofilament-M陽性の神経線維はほとんど見られなかったが、アデノウイルスを用いてGDNFを発現した心筋シートを貼付した群においては、シートに向かう神経線維の密度が有意に増加していた。また、移植シート部におけるGAP43の遺伝子発現はGDNF発現シート群で、対照群に比べて有意に増大していた。 以上の所見は、神経栄養因子を適切に用いることにより、in vivo移植心筋における自律神経突起の伸長を促すことが可能であり、心筋再生治療における機能的再生心筋の構築を行う上で重要なステップになりうると考えられる。
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