研究概要 |
今年度は、これまでの研究成果から得られた詳細な細胞死メカニズムに基づき、効率よく細胞死を防ぐ戦略を立案することを目標とした。特に、細胞死経路の中心を担うミトコンドリアPTポアを分子標的とした治療戦略が有望であると思われ、これに着目した。PTポアの構成因子の一つであるサイクロフィリンDのノックアウトマウスが樹立され、発生や発育には異常がないが、心筋虚血再灌流に対する耐性が高まっていることが報告されており[Nakagawa. Nature. 2005 ; 434 : 652, Baines. Nature. 2005 ; 434 : 658]、PTポアが治療の標的として有望であるとの仮説を強力に裏付けている。我々は、サイクロフィリンDの発現を選択的に抑制できるshort interfering RNA(siRNA)の配列をすでに同定し(蛋白レベルで60%以上を抑制)、これをラット初代培養心筋細胞に発現させたところ、活性酸素刺激に対する細胞保護効果を確認した。さらにこのsiRNAを心臓にアデノウィルスを用いて発現させて、二光子レーザー顕微鏡を用いて虚血再灌流における心筋細胞のミトコンドリア機能をリアルタイムに観察したところ、siRNAを発現する細胞では虚血再灌流に耐性を獲得して保護効果が得られていることを証明した。この研究成果は、欧州の一流誌に掲載された[Kato. Cardiovasc Res.2009 Jul 15 ; 83(2): 335-44]。
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