研究概要 |
マウスES細胞のNkx2.5遺伝子アリルにNkx2.5-GFPをノックインしたES細胞を用いて、これを分化誘導し、その過程で発現するイオンチャネルや転写因子を網羅的に解析した結果、ペースメーカ活性が生じる時期にHCN遺伝子の発現が増加することを見出した。さらにペースメーカ細胞にはHCN1ならびにHCN4の発現が優位であった、そこで、HCN4のアリルのエクソン1にGFP遺伝子をノックインしたES細胞を作製した。1)ノックインしたES細胞の樹立:マウスのHCN4イオンチャネルのプロモーター領域を含む5kbの5'-側と3kbの3'-側をPCRで増幅した後、GFPのcDNAを持ちNeomycine耐性遣伝子とジフテリア毒素遺伝子を有する真核細胞発現ベクターのmulti-cloning siteに挿入したノックインベクターを作成した。制限酵素でベクターをIinearizeしたのち電気穿孔法でマウスES細胞に遺伝子導入し、Neomycinにより耐性クローンを選択する。クローンをPCR法とサザーンプロット法により片アリルに相同遺伝子組み換えを起こしたノックインES細胞を樹立した。 2)ペースメーカー細胞の特性の評価:既報のhanging drop culture法により心臓分化を誘導し、安定してGFPを発現するクローンを選び出す。分化誘導6、8、10、14日のGFP陽性細胞をセルソーターにより採取した。チャンネル特性をRT-PCR法、免疫染色法ならびにウェスタンブロット法により解析したところ発現する心筋特異的転写因子やイオンチャネルの特徴は野生型と差がない。GFPシグナルの強い部位で自律拍動を認め、セルソーターによりGFP陽性細胞を分取すると80%の確率で自律拍動し、パッチクランプによる電気的な性質はペースメーカ細胞に一致し、イオンチャンネルを解析すると、Ifに加えてNa,Ca,I_kurならびにHERGチャネルを発現しているがI_k1チャネルは発現していなことが判明した。
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