研究概要 |
心筋梗塞後に起きる左室リモデリングは、心筋梗塞の予後を規定する因子である。細胞外マトリックスはコラーゲンやプロテオグリカンの集合体からなり、バーシカンは心臓における主要な細胞外マトリックス構成成分である。 近年行っている心血管疾患における細胞外マトリックスの役割についての研究過程で、この心臓に重要であるバーシカンが心筋梗塞の治癒過程で分解され、さらにバーシカン分解酵素であるADAMTSファミリーが心筋梗塞後に一過性に発現上昇することを見出した。バーシカン分解およびその分解酵素ADAMTSの心筋梗塞における役割を解明する。 (1)ADAMTS4ノックアウトマウス梗塞後リモデリング解析 ADAMTS4ノックアウトマウス心筋梗塞モデルを作製した。バーシカン分解が細胞浸潤に影響を与えることが予想されるので、F4/80陽性細胞として検出される炎症細胞浸潤の程度などを野生型の場合と比較を行った。梗塞後7日目の時点における細胞浸潤とバーシカン分解の関連を検討したが、野生型と有意な差は認めなかった。 (2)ADAMTS4ノックアウトマウス梗塞後リモデリングの生理学的解析 ADAMTS4ノックアウトマウス心筋梗塞モデルを作製する。ADAMTS欠損が生理的機能に影響を与える可能性が新たに考えられたので、梗塞後7日目の時点における心機能・左室駆出率など生理的機能を心臓エコー検査などにて検討したが、明らかな差は見られなかった。 今回の結果の考察として、部位または病態特異的な代償メカニズムが働いている可能性が考えられる。すなわち、ADAMTS4以外の他のバーシカン分解酵素が代わりに働いている可能性が挙げられる。現在ADAMTSには19種類が知られており、このうちバーシカン分解酵素として働くものはADAMTS1,4,5,9などがある。これら他のADAMTSメンバーの発現動態など、さらに詳細なADAMTSの解析により、左室リモデリングのメカニズムの解明につながるものと考えられた。
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