研究概要 |
CD11c-DTR Tgマウスの骨髄を野生型マウスに移植したマウスにおいて、脾細胞のFACSにて、1〜2%程存在する樹状細胞をジフテリア毒素(4ng/kg)投与でほぼ完全にアブレーションできることを確認した。また、ジフテリア毒素が樹状細胞以外の白血球細胞(CD4陽性Tリンパ球、CD8陽性Tリンパ球、Bリンパ球、マクロファージ、NK細胞)には影響を与えないことを、同様の脾細胞のFACSを用いて確認した。骨髄移植後、生着のため8週間の期間をおいた移植マウスにおいて心筋梗塞を作成し、4週間後の心機能、血行動態を評価した。その結果、ジフテリア毒素によって選択的に樹状細胞をアブレーションしたマウスで、心エコーにおいて左室リモデリングが抑制され(LVEDD,4.1±0.1vs.4.4±0.1mm,p=0.03;%FS,28.3±0.8vs.23.7±1.3%,p<0.01)、カテ先マノメーターによる解析でも左室収縮能の改善が示された(LVdP/dtmax,8340±532vs.5924±810mmHg/sec,p=0.01)。 樹状細胞をアブレーションすることで、心筋梗塞後心不全を改善させる可能性が示唆されたことから、そのメカニズムを追求するために、心筋梗塞後1週間において、梗塞部及び境界領域の組織よりmRNAを抽出し、microarrayによる網羅的遺伝子解析を行った。その結果、IL-6、TNF-αなどのproinflam matory cytokineの遺伝子発現に明らかな有意差はなかったものの、心筋梗塞においてprotectiveとされるIL-10、IL-1R antagonistの発現が樹状細胞をアブレーションした群にて有意に高いことが明らかとなった(Fold Change:IL-10,2.08;IL-1Rantagonist,3.12)。
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