樹状細胞のマーカーであるCD11cのプロモーター下流にサルのジフテリア毒素受容体(DTR)とGFPを組み込んだ遺伝子改変マウス(CD11c-DTRマウス)を用いて、心筋梗塞後左室リモデリングにおける骨髄由来樹状細胞の役割につい検討を行った。その結果、樹状細胞をアブレーションした群とコントロール群間で、梗塞サイズ、生存率に差を認めなかった。梗塞4週後に、左室のmRNAを抽出し、各種サイトカインの発現をreal time RT-PCRにより検討したところ、IL-6、TNF-αなどのproinflammatory cytokineの遺伝子発現には有意差を認めなかったが、CD68、CCL2の発現が樹状細胞をアブレーションした群においてコントロールの梗塞群に比較して高いことが明らかとなった。免疫組織染色を行うと、Mac-3陽性のマクロファージの浸潤が、樹状細胞アブレーション群で有意に増加していた。心エコーにおいて左室機能を評価したところ、左室リモデリングはむしろ樹状細胞のアブレーションによって増悪し、カテ先マノメーターによる解析でも左室収縮能の悪化が示された。ごく最近、肝臓の虚血再灌流モデルに対して、樹状細胞をアブレーションした際の効果が検討され、樹状細胞かIL-10の放出などを介して、単球・マクロファージ系の炎症を制御している可能性が示唆されている(J Clin Invest 2010 Feb ; 120(2) : 559-69)。心臓においても、樹状細胞による単球・マクロファージ系への制御機構が存在している可能性が考えられる。
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