樹状細胞のマーカーであるCD11cのプロモーター下流にサルのジフテリア毒素受容体(DTR)とGFPを組み込んだ遺伝子改変マウス(CD11c-DTRマウス)を用いて、心筋梗塞後左室リモデリングにおける骨髄由来樹状細胞の役割につい検討を行った。骨髄由来樹状細胞を除去した群において、コントロール群に比べ、左室リモデリングが増悪するとともに、Mac3陽性マクロファージの梗塞部への浸潤が増加し、IL-6やTNF-αといった炎症性サイトカインの発現上昇を認めることが明らかになった。さらに炎症性単球であるLy6c^<high>単球が末梢血ならびに梗塞部心筋で増加すること、これに伴い、梗塞部心筋での細胞外マトリックス分解酵素の活性が上昇すること、心筋細胞のアポトーシスが亢進することも明らかとなった。樹状細胞を除去した群では、抗炎症性サイトカインであるIL-10の発現が低下し、さらに血管新生や治癒過程に重要な役割を果たすことが知られている抗炎症性Ly6c^<low>単球が低下することも明らかになった。骨髄由来樹状細胞を除去したマウスに対して、wild typeの骨髄由来樹状細胞を移植したところ、マクロファージ、炎症性Ly6c^<high>単球が低下し、同時に左室機能が改善することも示された。骨髄由来樹状細胞が、単球ならびにマクロファージのsubpopulationに影響を及ぼすとともに、梗塞後治癒過程で重要な役割を果たしていることが明らかになった。これらの結果より、樹状細胞をターゲットとした梗塞後左室リモデリングに対する新たな治療法の開発が期待された。
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