研究概要 |
伸展刺激感受性チャネル(TRPV2)の筋変性疾患における病態的意義を確立するとともに治療創薬標的としての可能性を検討した。TRPV2を特異的に阻害することによりmdxマウス,BIOハムスターの筋ジストロフィーが改善されたのでTRPV2特異阻害剤は筋ジストロフィー、心筋症治療に有効な可能性が高い。今年度は特異的阻害抗体の作製とその効果の検討をおこなった。細胞外を認識する抗体は一般に免疫寛容のため作製しにくいため、マウスTRPV2発現HEK細胞を免疫疾患マウスに免疫し定法に従い脾臓をミエローマと融合しTRPV2の外側を認識する抗体を産生するハイブリドーマ上清をflow cytometryにより選び種々のアッセイ、スクリーニング後、モノクローン化した。またTRPV2の5番目と6番目の膜貫通領域の間にある親水性の高い領域のペプチドをウサギに免疫して作製した。各々抗体について、イムノブロット、生細胞を用いた免疫染色を行い、TRPV2外側認識抗体であることを確認した。また阻害活性のスクリーニングを行い、TRPV2活性を抑制する抗体として、マウスモノクローナル抗体11-6および88-2とウサギポリクローナル抗体591、592を得た。これらの抗体は、TRPファミリーチャネルの他のメンバーTRPV1、TRPC1をほとんど阻害しなかった。ヒト心筋症のモデル動物であるJ2N-kハムスターの培養骨格筋細胞を用いて,阻害抗体が細胞内Ca^<2+>代謝異常および筋変性を抑制することを確認した。この抗体はTRPV2を特異的に阻害する実験ツールとして有力であるとともに移殖しか治療手段がない拡張型心筋症などに対する有効な治療手段となると思われる。
|