研究概要 |
【目的】 本申請では,ヒト臍帯血由来痒EPCを単離し,増殖能の解析および細胞表面マーカー・遺伝子発現解析等を中心とした分化能の解析を通じて,EPCの性質を明らかにし,新たなEPCの単離同定とその生体内機能解析を行う. 【研究計画および成果】 1.siRNAを用いた臍帯血由来EPCのin vitro機能解析 ALDE-low EPCが,ALDE-high EPCと比較して,虚血部位における治癒効果が高いことから,両者間における低酸素応答性について解析を行った.先行研究により,ALDE-high EPCよりALDE-low EPCにおいて,低酸素に応答して標的遺伝子の転写活性化が促進していることが分かっている. そこで,本申請では低酸素応答転写因子(Hypoxia inducible factor:HIF)の中で,特にHIF-1alphaとHIF-2alphaに着目し,どちらの転写因子がEPCの虚血部位における治癒に関与しているのかについて,siRNAを用いて明らかにした. その結果,HIF-1alphaの発現を低下させることにより,標的遺伝子であるGlut-1とVEGFのmRNAの発現低下が見られた.一方,HIF-2alphaの発現を低下することにより,VEGFとCXCR4のmRNAの発現低下が見られた. 2.siRNA導入後のEPCを用いた虚血部位における創傷治癒効果の解析 それぞれのHIFに対するsiRNAによりHIF-1alphaあるいはHIF-2alphaの発現低下の見られたEPCを有茎皮弁移植モデルマウスに投与し解析を行った. HIF-1alphaの発現を低下させたEPCは,コントロール群と比較して,創傷治癒に対する有意な遅延は見られなかった.一方,HIF-2alphaの発現を低下させたEPC投与群において,創傷治癒効果が有意に遅延していることが明らかとなった. 以上のことから,HIF-2alphaの標的遺伝子であるCXCR4のEPCにおける発現が,マウス有茎皮弁モデルにおける創傷治癒に対して重要な因子であることが明らかとなった.
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