研究課題
心臓はポンプ機能を維持するために大量のエネルギーを必要とする臓器であり、その主要なエネルギー基質は脂肪酸である。心筋細胞が脂肪酸を取り込みエネルギー基質として利用するメカニズムは詳細に検討されているが、血中脂肪酸がどのようにして毛細血管内皮細胞を通過し心筋細胞間質に到達するか、という機序はまったくといっていいほど知られていない。申請者らは脂肪細胞の最終分化マーカーfatty acid binding protein4(FABP4)が内皮細胞特異的なNotchシグナルの標的因子であり、心臓毛細血管内皮細胞特異的に発現していること、類似タンパクFABP5も毛細血管内皮細胞特異的に発現することを明らかにした。特筆すべきことに、FABP4/5のダブルノックアウトマウスの心臓では脂肪酸取り込みが著明に減少し、相対してグルコース取り込みが劇的に上昇するのを確認した。以上より、脂肪酸は血中より一旦内皮細胞へ取り込まれ、細胞内でFABP4/5と結合し能動輸送により内皮細胞を通過して心筋間質に放出されると考えられる。次にFABP4の発現調節のメカニズムを検討した。まず、Notchシグナルの構成因子Notch1(レセプター)とDll4(リガンド)がin vivoで心臓毛細血管内皮に強力に発現すること、Dll4刺激によりFABP4が誘導されることを観察した。Notchシグナルのドミナントアクティブフォーム(NICD)を過剰発現すると、心臓毛細血管内皮細胞(HCMEC)でFABP4が誘導された。このHCMECにNICDを過剰発現しさらにPPAR-γるの合成リガンド(ピオグリタゾン)を添加すると、FABP4発現は劇的に上昇し、PPAR-γ阻害薬であGW9662を加えると、ピオグリタゾンにより上昇した分だけ完全に抑制された。また、脂肪細胞特異的と考えられていたPPAR-γ2がNotch刺激により誘導され、PPAR-γ1は誘導されないことを確認した。以上より、Dll4により刺激をうけたNotchシグナルは、一部PPARγ依存的に、一部はPPARγ非依存的にFABP4を誘導することが明らかになった。
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