研究概要 |
内皮細胞は、様々な血管障害因子により活性化を受け、動脈硬化の初期病変形成に重要な役割を果たす。その結果、血液凝固系の活性化、平滑筋細胞の増殖、血管透過性の亢進などが惹起され動脈硬化が進行する。本研究では、内皮細胞の活性化や透過性亢進におけるプロテイナーゼ活性化型受容体の役割を明らかにし、動脈硬化の初期病変形成における血液凝固系と内皮細胞機能との相互作用の役割を明らかにする。本年度は内皮細胞におけるトロンビンによるミオシン軽鎖のリン酸化の制御機構について以下の研究成果をあげた。 1、 トロンビンは2相性のミオシン軽鎖の一リン酸化と、一過性の二リン酸化を引き起こした。 2、 細胞外Ca^<2+>を除去すると、一リン酸化は抑制されたが、二リン酸化の程度および時間経過は影響を受けなかった。 3、 細胞内Ca^<2+>をキレートすると一リン酸化の初期相は影響を受けなかったが、トロンビン刺激前と刺激後20分以降の持続相は抑制された。 トロンビン刺激前の二リン酸化は影響を受けなかったが、一過性の二リン酸化の一部が抑制された。 4、 Rhoキナーゼインヒビター(Y27632, H1152)は、一リン酸化の持続相を抑制したが、初期相には影響を与えなかった。二リン酸化は完全に抑制された。 以上の結果から、内皮細胞においてトロンビンが引き起こすミオシン軽鎖の一リン酸化と二リン酸化は異なる制御を受けていることが明らかとなった。平成22年度は、電気抵抗を測定し、内皮細胞のバリア機能破綻に関わるミオシン軽鎖リン酸化の制御機構を明らかにする。
|