研究課題
私達はシグナルシークエンストラップ法を用いて血管内皮細胞に発現する未知の分子の単離を試みた。その結果、血管内皮細胞に高い発現を示す全く未知の遺伝子を発見し、BLADEと名付けた。詳細な機能解析の結果、本遺伝子は抗アポトーシス分子であるcIAP-1, cIAP-2のプロテアソームにおける分解を制御することで血管内皮細胞のアポトーシスを制御することが明らかとなり、本遺伝子をApoptosis Regulator through modulating IAPs expression(ARIA)と改名し、以上の研究成果をProc Natl Aca d Sci U S A.2009, 106(20):8227-32に報告した。ARIA(BLADE)のノックアウトマウスを用いて下肢虚血モデルを作成し、虚血誘導性新生血管形成能を検討した結果、ARIAノックアウトマウスでは虚血誘導性新生血管形成が著明に亢進していることが明らかとなった。さらにARIAは血管内皮前駆細胞(EPC)において、極めて高い発現を示すことを見いだした。当該年度にはARIAノックアウトマウス胎児は発育遅延を認めないが非致死性の出血をきたすことを発見し、この出血は微小血管の過度の増生が原因であることを明らかとした。またEPCにおいてARIAをノックダウンするとアポトーシスの抑制のみならず、遊走能・管腔形成能の亢進も認め、そのメカニズムはPI3K/Aktシグナルの増強であることを見出した。さらにARIAはPI3Kに拮抗する脱リン酸化酵素であるPTENと結合することを見出した。以上より、ARIAはPTEN/PI3K pathwayの制御を介して血管内皮・血管内皮前駆細胞の機能を強力にコントロールしていると考えられた。
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http://www.f.kpu-m.ac.jp/k/med2/