背景:冠動脈疾患(CAD)の発症には、単球・マクロファージなどの免疫担当細胞でのToll様受容体4(TLR4)シグナルの活性化が関与していると考えられている。近年、let-7familyに属するmicroRNA、let-7iが、TLR4の発現を直接調節するmicroRNAとして注目されている。 目的と方法:ヒトTHP-1細胞を用いたlet-7iトランスフェクションモデルを作成し、let-7i万機能解析を行った。CAD群および非CAD群でのTLR4およびlet-7iの発現を比較検討した。また、無作為臨床試験(アトルバスタチンvs.ロスバスタチン)により、TLR4シグナルに対するストロングスタチンの効果を検証した。CAD群(n=98)および非CAD群(n=48)の末梢血液から遠心分離した末梢血単核細胞(PBMCs)を対象とした。Real-timePCR法により、let-7iおよびTLR4mRNAを定量測定した。また、FACSscanを用いてTLR4蛋白を定量測定した。CAD群は、アトルバスタチン群(10mg/日)およびロスバスタチン群(2.5mg/日)にランダム化し無作為臨床試験を実施した。 結果:let-7iトランスフェクションモデルにより、let-7iは、TLR4の発現に必須な因子であることが明らかとなった。CAD群でのlet-7iの発現は、非CAD群より低値であった(P<0.01)。一方、CAD群でのTLR4(mRNAおよび蛋白)の発現は、非CAD群より高値であった(P<0.01)。投与12ヵ月後のアトルバスタチン群でのlet-7iの発現は増加し、TLR4の発現は減少した。一方、ロスバスタチン群でのlet-7iとTLR4の発現は、変化を認めなかった。 結語:末梢血単核細胞でのlet-7iの発現低下に伴うTLR4の発現は、CAD発症の一因であることが示唆された。また、アトルバスタチンは、let-7iの発現を介したTLR4の発現を抑制し、アトルバスタチンが持つ抗動脈硬化作用のメカニズムの一つと考えられる。
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