研究課題/領域番号 |
20590887
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研究機関 | 自治医科大学 |
研究代表者 |
上羽 洋人 自治医科大学, 医学部, 講師 (80316546)
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研究分担者 |
川上 正舒 自治医科大学, 医学部, 教授 (40161286)
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キーワード | エリスロポエチン / アゴニスト / 動脈硬化 / 血管内皮細胞 / アポトーシス / シグナル伝達 / WHHLMIウサギ |
研究概要 |
本研究の目的は、エリスロポエチン受容体アゴニスト(EPORA)のin vivoにおける抗動脈硬化作用を検討することである。神戸大学医学部附属動物実験施設の塩見准教授の協力を得て動脈硬化・心筋梗塞を自然発症するモデル動物であるWHHLMIウサギを用いて実験を行った。EPORA群(n=8)には30μg/kgのEPORAを3回/週、32週間皮下投与し、コントロール群(n=8)には同量のプラセボペプチドを投与した。安楽死させて冠動脈および大動脈を摘出し、動脈硬化病変の進行がEPORAによって抑制されるか否かを評価したところ、EPORAが冠動脈の動脈硬化病変を有意に抑制することが明らかになった(冠動脈平均狭窄率(Mean±SEM):コントロール群38.0±2.7%、EPORA群21.3±2.2%)。さらに、75%以上の有意狭窄病変を有する割合に関しては、コントロール群17.9±6.3%に対してEPORA群では3.8±2.5%と顕著な抑制効果がみられた。しかしながら、大動脈の動脈硬化病変には両群間で明らかな差を認めず(動脈硬化病変面積:コントロール群79.6±3.5%、EPORA群81.4±2.4%)、この原因に関しては、EPORAの抗動脈硬化作用を伝達する共通β受容体の発現が冠動脈病変と大動脈病変で異なっている可能性があり現在比較検討中である。血中脂質レベルおよび血糖値には両群間で有意差を認めなかった。血清TNF-α、hsCRP、NOxレベルに関しても両群間で明らかな差はみられなかったが、in vitroにおける検討ではCRPによって惹起される血管内皮細胞のNO産生障害をEPORAが有意に改善させることが判明し、さらにCRPによる内皮細胞のアポトーシス誘導および単球のMMP-9産生亢進作用もEPORAが有意に抑制することが判明した。細胞内シグナル伝達系に関しては既報(Proc Natl Acad Sci USA. 2010; 107(32):14357-14362.)においてEPORAによるAktの活性化が心筋細胞のアポトーシス抑制に重要な役割を担っていることを報告しているが、内皮細胞のアポトーシス抑制においてもsiRNA法により同様の結果が得られた。EpoRAにはスタチンのような多面的効果が認められ、新しい動脈硬化治療薬として臨床応用が期待される(投稿準備中)。
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