本研究は、主に動物(マウス)を用いて、気管支喘息の各種病態(アレルゲン感作、好酸球性気道炎症、気道リモデリング)、また、肺気腫の形成におけるオステオポンチン(OPN)の作用を検証する事を目的とする。 これまで気管支喘息を構成する種々の要素における、OPNの機能的役割を検討してきた。OPNは、好酸球の走化作用を有し、好酸球性気道炎症に関与すること、またOPN中和抗体の投与により、喘息病態が改善することを報告した(Takahashi et al.Clin Exp Allergy 2009)。また、特異的IgE抗体の産生を特徴とするアレルゲン感作においては、OPN欠損マウス及びリコンビナント蛋白を用い、OPNはアレルゲン感作に抑制的に作用することを報告した(Konno S et al.Eur J Immunol 2009)。喘息の重要な病態の一つである気道リモデリングに関しては、OPN欠損マウスを用いた検討を予定していたが、線維化促進作用を有するという報告が相次ぎ、それ以降の検討は中止とした。 いっぽう、肺気腫におけるオステオポンチンの関与については、マウスにおける喫煙短期暴露(10週間)、長期暴露(4か月)により、血清中及び気管支肺胞洗浄液中のOPN濃度が上昇することを確認し得た。しかし、OPN欠損マウスを用いた検討では、少なくともマウスモデルにいては、OPNの欠損が肺気腫形成に関与している事実を見出すことはできなかった。
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