研究概要 |
この1-2年の間にklotho遺伝子の詳細な機能が明らかにされてきた(Urakawa I, et al. Nature.2006;444:770-4,Imura A et al. alpha-klotho as a regulator of calcium homeostasis. Science. 2007 316(5831):1615-8,Kurosu H et a1.Regulation of FGF-23 by klotho. J Biol Chem. 281:6120-6123). これらの報告からklotho遺伝子はには,骨細胞から産生・分泌される増殖因子FGF-23の受容体の機能を修飾することが明らかとなった.FGF-23は骨細胞で産生され,vitaminDの活性化に必須な1α,25(OH)aseの活性化を抑制しvitDの活性化を抑制することにより,リンの再吸収を抑制する。klothoは通常の受容体とは異なり,FGF受容体type1,type2およびtype3と複合体を形成することによってFGF-23とFGF受容体との結合親和性を高め,FGF-23のシグナリングを促進する働きをする.klotho欠損マウスの表現型(動脈硬化,異所性石灰化,高Ca血症,高リン血症)は,FGF-23欠損マウス(Fgf23-/-)やVitDシグナリングの過剰マウスにも認められ,ことにFgf23-/-では慢性閉塞性肺疾患(COPD)が認められている(Razzaque MS et al.FASEB J.2006;20(6):720-2).以上より,klothoマウスに観察されるCOPDは,高リン血症やVitDシグナルによって起こっている可能性がある. 我々は,klotho々ウス肺と野生型マウス肺とからそれぞれmRNAを抽出し,differential display法を行って多くの遺伝子発現パタ一ンが変化していることを確認した.その中で,TGF-β,Collagen typeIV,SP-A遺伝子などの発現が代償的に増加していた,また,klothoマウスが高リン血症を呈することから,培養線維芽細胞をリン2.2mmol/Lの高リン状態で培養し遺伝子発現の変化をみると,転写因子Runx2の発現亢進がみられ,さらにRunx2がTGF-βシグナリングを抑制することを見出した.Runx2は異所性石灰化を促進することが報告されており,現在klotho肺における発現を検討している.「高リン血症→Runx2の発現亢進→アポトーシスの亢進」,「高リン血症→Runx2の発現亢進→TGFβシグナリングの阻害→線維化阻害の仮説」が実証できれば,COPDの新たな分子機構の解明に繋がると考える.
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