研究概要 |
klotho遺伝子変異マウスではII型肺胞上皮細胞のアポトーシスがみられ,肺胞上皮細胞の機能異常が肺気腫の病態形成に重要な役割を果たしているものと推測されている.これまで,II型肺胞上皮細胞のアポトーシスや増殖を制御する中心的なメカニズムとして,酸化ストレスの産生系・消去系の不均衡が報告されてきた.一方,最近の研究ではII型肺胞上皮細胞が分泌するサーファクタント蛋白は,界面活性物質として肺胞表面を被覆し肺胞の虚脱を防ぐだけでなく,酸化ストレス消去系としての機能も有することが指摘されている.サーファクタント蛋白は90%が脂質,10%が蛋白で構成されており,さらに脂質の構成成分としては,パルミチン酸,コリン,グリセロール3リン酸,が重要である. 本研究では肺における脂質代謝に着目し,肺胞上皮細胞における脂質合成やβ酸化の調節異常が肺気腫の病態形成に与える影響の検討を開始した.今年度は,Elongation of long-chain fatty acids family member 6(Elov16)という脂肪酸伸長酵素に着目した.Elov16は細胞内の小胞体に存在し,炭素数12~16の飽和および一価不飽和脂肪酸の伸長活性を有し,脂質の合成に関わる.Elov16に対する抗体を用いて,正常の肺組織を免疫組織学的に検討すると,II型肺胞上皮細胞とマクロファージにElov16の発現がみられた.さらに,肺気腫では発現が増加しており,その病態形成に何らかの役割を果たしているものと考えられた.
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