研究概要 |
klotho遺伝子ホモ欠損マウスには石灰化を伴う肺気腫とメンケベルク型動脈硬化がみられる.本マウスの大動脈中膜は石灰化を示し,免疫染色で同部位に骨・軟骨分化を誘導する転写因子Runx2の発現増加を,RT-PCR法ではRunx2 mRNAの発現増加を確認した.Runx2は骨軟骨細胞分化に必須の転写因子であり,osteocalcin,osteopontinなどの発現を介して,動脈硬化病変形成に関与している. 肺の気腫化を理解するには,組織修復過程である肺の線維化病態の解明が重要である. 1. Hypoxia-inducible factor-1α(HIF-1α)は線維化に関与する転写因子である.Bleomycinによるマウス肺線維症モデルを免疫染色で検討すると,肺胞マクロファージでHIF-1αとplasminogen activator inhibitor-1(PAI-1)の発現が増加していた.マウス肺胞マクロファージをTGF-β1で刺激するとPAI-1の発現が誘導され,HIF-1α蛋白も増加した.TGF-β1によるPAI-1の発現誘導はHIF-1α遺伝子発現の抑制で減弱した.HIF-1αは肺線維化病態で重要な役割を果たしている可能性がある. 2. 線維化メカニズムとしてepithelial-mesenchymal transition(EMT)に注目した.ラット肺胞上皮細胞でNotchを活性化すると,間葉系マーカーの発現が誘導され,上皮マーカーの発現が減少した.Notchシグナルを抑制すると,TGF-βによるα-SMAの誘導が減弱した.Bleomysin肺線維症モデルとヒト間質性肺炎組織を免疫染色で検討すると,Notchはα-SMA陽性の筋線維芽細胞に強く発現していた.NotchはEMTによる筋線維化細胞分化を介して肺線維化に重要な役割を果たしている.
|