研究概要 |
ヒト線維芽細胞に4つの遺伝子(Oct-3/4, c-Myc, Sox2, KLF4)を導入して初期化することによって多能性幹細胞を作製する手法が確立した(ヒトiPS細胞).また,この頃から,ES細胞,次いでiPS細胞において分化,形態変化に上皮間葉移行が関与するという報告が相次いだ.このため,患者皮膚もしくは肺細胞から採取した線維芽細胞を用いてヒトiPS細胞を作成し,ここから肺の上皮もしくは間葉系細胞を作成し,上皮間葉移行の関与を検討する方向とした. COPDを合併する肺癌患者の摘出肺から肺線維芽細胞を,また手術時の皮膚から皮膚線維芽細胞を分離し,ヒトiPS細胞を4因子または3因子で作成した.同様のことを胸腔鏡下肺生検を施行した間質性肺疾患患者からも行った. ヒトiPS細胞から,まずII型肺胞上皮細胞を誘導する実験を試みた.方法は,既報に則って肺胞上皮細胞で特異的に産生されるサーファクタントプロテインC(SPC)のプロモータ遺伝子とレポーターを組み合わせたベクターを作成し,エレクトロポレーション法にてiPS細胞に遺伝子導入し,これを分化させるものである.ベクターをコントロールのMLE12細胞に導入した結果,ベクターが機能していることが判明したため,iPS細胞に導入し,分化誘導を手掛けているところである.今後は,誘導II型肺胞上皮細胞の確立,そこから間葉系細胞の誘導,その過程での上皮間葉移行の役割を解明したい.
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