1)COPDの病態におけるサーファクタントプロテイン-D(SP-D)の役割を解析する目的でモデルマウスとしてエラスターゼ気道投与COPDモデルマウスを作製した。このモデルでは3週間後に組織学的に肺胞破壊を伴った気腔の開大を認め、COPD様変化が誘導されることを確認した。このモデルを正常マウスおよびSP-Dヘテロ欠損マウス(SP-D+/-)を用いて作製し、組織学的検討を加えた。その結果、SP-D+/-ではCOPD様変化が増強する傾向を認めた。この結果はSP-DはCOPDの進展に係わっている可能性が強く示唆されるが、この作用がどのようなメカニズムを介しているのか検討中である。 2)またCOPDの急性増悪には気道感染、特にRSウイルスが関与することが報告されているが、RSウイルス感染におけるSP-Dの役割を解析する目的で、polyIC気道投与モデルを正常マウスおよびSP-D+/-を用いて作製した。その結果、SP-D+/-では肺胞洗浄液中の細胞数増加が正常マウスより減少傾向であった。これは一見予想に反した結果であり、この現象の意義について検討中である。 3)COPDでは喫煙刺激による炎症細胞の活性化が病態の中心と考えられている。そこで肺胞マクロファージ細胞株にタバコ抽出液(CSE)を負荷し、サイトカインおよびプロテアーゼ発現を測定した。その結果、CSEが炎症性サイトカインおよびマトリックスメタロプロテアーゼ(MMP)の発現を誘導することを確認した。現在、この実験系にSP-Dを添加し場合にサイトカインやMMPの発現量が変化するか検討中である。
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