研究概要 |
COPDの病因として有害なガスによる1)肺の炎症、2)プロテアーゼ/アンチプロテアーゼの不均衡、3)酸化ストレスの増加の関与が示唆されている。一方でCOPDの病態を創傷治癒不全と考えた際に、創傷治癒に中心的な役割を担うといわれている線維芽細胞の役割については全く不明であり、COPDの病態における肺線維芽細胞の役割を詳細に検討した報告はほとんど無い。本研究はCOPDにおける肺線維芽細胞の役割を解明することを目的とした。COPDおよび健常人より線維芽細胞を分離・培養しその表現型の差異について創傷治癒能力の観点から検討を加えた。COPDから分離した線維芽細胞は、collagen gel収縮法で検討した組織治癒能力が低下していた。また、chemo attractan七に対する遊走能も低下していた。これらの低下の程度はCOPD患者の気流制限の程度と良い相関を示した(Togo S, Sugiura H et al. Am J Respir Crit Care Med2008)。このことからCOPDの病態に線維芽細胞の機能不全が関与する可能性が示唆された。また、COPDの経年的な気流制限の増悪にウイルス感染による呼吸機能障害の関与が提唱されている。この呼吸機能障害は通常、非可逆的であり、そのメカニズムについては不明な点も多い。我々は、ウイルス感染のモデルとしてToll-like receptor3のリガンドであるpoly(I:C)を用いて気流制限に重要な気道の線維化について検討した。Poly(I:C)の投与は、線維芽細胞を刺激して筋線維芽細胞への分化や細胞外マトリクス蛋白の過剰産生を引き起こした。上述した作用は、NF-kBの活性化がTGF-β1の過剰分泌をもたらした結果生じることを証明した(Sugiura H et al. Am J Respir Cell Mol Biol. in press)。本年度の結果を踏まえ、来年度以降は、線維芽細胞の機能の観点からさらにCOPDの病態にアプローチする予定である。
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