研究概要 |
慢性閉塞性肺疾患(chronic obstructive pulmonary disease : COPD)の病態解明および治療法の開発は、全世界的にも急務である。病因としては、有害なガスによる1)肺の炎症、2)プロテアーゼ/アンチプロテアーゼの不均衡、3)酸化ストレスの増加の関与が示唆されてはいるが、他の病因論については全く不明である。COPDを過剰な炎症によってもたらされる肺組織の破壊と考えた際、その病態は、創傷治癒機転の障害と捉えることもできる。本研究では、COPDの病態形成における線維芽細胞の役割を解明するために、次の3点に着目し検討する。1)COPDと健常人では、気道および肺線維芽細胞のgenotypeおよびphenotypeの相違2)健常人とCOPDにおける線維芽細胞のアポトーシスの閾値3)急性増悪における線維芽細胞の役割を解明するために線維芽細胞のToll like receptor(TLR)刺激時の効果を検討する。 1) COPDと健常人では、気道および肺線維芽細胞のgenotypeおよびphenotypeの相違の検討 本検討は、すでに昨年完了し、phenotypeの相違について英文誌に発表済みである。(Togo S,Sugiura H et al.Am J Respir Crit Care Med 2008) 2) 健常人およびCOPDの線維芽細胞のapoptosisの評価 apoptosisの評価は、より厳密に行うため、(1)TUNEL staining、(2)Comet assay(single cell electrophoresis assay)、(3)Flow cytometry、(4)MTT assayを組み合わせて評価する。健常人、COPDの線維芽細胞を培養後、apoptosisにいたるタバコ煙抽出液(cigarette smoke extract : CSE)濃度を決定することで、各々のfibroblastのタバコによるアポトーシス閾値を評価する。現在、検討中であり、COPD由来の線維芽細胞は、タバコによるアポトーシスに対し、抵抗性であるという結果を得、確認中である。 3) 線維芽細胞のToll like receptor(TLR)刺激時のシグナリングと効果を検討 TLR3のシグナリングについて線維芽細胞での検討は終了し、TLR3の刺激は、線維芽細胞を活性化し、筋線維芽細胞に分化させることで組織のリモデリングを増強することを英文誌に報告した。(Sugiura H et al. Am J Respir Cell Mol Biol 2009)
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