研究概要 |
敗血症性ARDSではToll様受容体(TLR)刺激に酸化ストレスが加わることにより、特にマクロファージにおいてNuclear factor kappaB(NF-κB)を介した炎症性サイトカインの発現が相乗的に充進している。一方、Keap1は細胞内の酸化ストレスを感知し、Nrf2の活性化を介した抗酸化ストレス遺伝子の発現を誘導することで、敗血症性ARDSにおけるTLR刺激と酸化ストレスの相乗作用を遮断し、炎症性サイトカインの産生を抑制することが期待される。従って、当該年度研究では野生型マウス、およびNrf2欠損マウスより腹腔マクロファージを採取し、TLRのリガンドを投与した際の炎症性サイトカインの発現について両者で比較した。TLR3のリガンドであるポリI:C、およびTLR4のリガンドであるリボ多糖体刺激後のマクロファージでは共にNF-κBの活性化、および炎症性サイトカイン(TNF-α,IL-1β,IL-6)の発現充進が見られたが、いずれもNrf2欠損マクロファージで顕著であった。ラジカルスカベンジャーであるN-アセチルシステインをNrf2欠損マクロファージに投与すると、TLR刺激後のNF-κBの活性化、および炎症性サイトカインの発現元進は抑制されたことより、Nrf2欠損マクロファージでは酸化ストレスが高じた結果、NF-κBの活性化や炎症性サイトカインの発現が充進したものと考えられた。以上の結果より、Nrf2/Keap1システムはTLR刺激時の細胞内酸化ストレスを抑制し、敗血症性ARDSにおける炎症抑制に重要な役割を果たす可能性が示唆された。本結果を踏まえ、次年度以降は敗血症動物モデルにおけるNrf2/Keap1システムの防御作用について検討予定である。
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