【研究の目的】肺がんの新規治療標的となり得る上皮間葉系細胞転換(EMT)関連分子を同定する。 【平成22年度の成果】肺がんのEMTの維持においてEMT誘導転写因子であるZEB1遺伝子が大きな役割を果たしていることを発見した。複数のEMT制御転写因子の中でZEB1遺伝子の発現が肺がんのEMT形質と最もよく相関した。また、RNA干渉を用いたZEB1遺伝子のノックダウンが肺がん細胞の足場非依存性増殖(軟寒天中でのコロニー形成)、足場依存性増殖(液体培養中でのコロニー形成)を強く抑制し、また、アポトーシス(切断型カスペース3の発現にて評価)が誘導されることを発見した。さらに、ZEB1遺伝子ノックダウンによる肺がん細胞の増殖抑制効果をインビボの実験にて評価した。ZEB1遺伝子を標的としたショートヘアピンRNA発現ベクターをZEB1高発現細胞株NCIH460に導入した。ZEB1遺伝子ノックダウン肺がん細胞はコントロール(GFPを標的としたショートヘアピンRNA発現ベクター)に比べヌードマウス皮下での腫瘍形成能力が強く抑制された。これらの結果はZEB1遺伝子の肺がん治療標的としての有用性を強く示唆した。また、悪性胸膜中皮腫細胞においてもZEB1遺伝子ノックダウンが細胞増殖を抑制することを発見した。最後に、ZEB1遺伝子のノックダウン細胞を用いマイクロアレイ発現解析を行いZEB1遺伝子の発現によって影響をうける遺伝子群を特定した。
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