研究概要 |
血管新生については多くのことが研究され、抗血管新生薬の臨床応用が進んでいるが、リンパ管新生や癌のリンパ行性転移については詳しい機序がほとんど解明されていない。しかし最近になってようやくリンパ管内皮特異的なマーカーやリンパ管内皮の増殖因子やその受容体が同定され、リンパ管発生とリンパ管新生の研究分野は飛躍的に進みつつある。今後リンパ管新生のメカニズムを解明することが重要であり、それを制御する治療法の開発が期待される。 Tetraspanins(TM4)はCD9, CD81, CD151などを含む細胞膜4回貫通蛋白でヒトでは32種類が報告されている。この蛋白ファミリーの特徴として膜蛋白と複合体を形成することにより接着、遊走、増殖、癌転移など様々な機能に影響を与える。TM4は血管内皮細胞だけでなく、リンパ管内皮細胞においても何らかの役割をしているのではないかと考えられる。実際ヒト皮膚リンパ管内皮(Human Dermal Lymphatic Endothelial cells : HDLEC)ではHUVECと比べintegrinやtetraspanin(CD9, CD81, CD151)の発現が増強していることを確認した。中でもCD9は他のtetraspaninsよりも発現が強く、さらにMatrigel上でのcable formationに抗CD9抗体は著明な影響を示した(未発表データ)。さらに様々な腫瘍組織でCD9とリンパ管内皮のマーカーであるLYVE-1の2重染色をしたころ、腫瘍の血管内皮とリンパ管内皮においてCD9の発現が確認された。以上のことよりTM4中でもCD9は、angiogenesisだけでなくlymphangiogenesisにも関与するのではないかと仮説をたてて、以下の実験を継続中である。
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